教授が語る!AIを用いた投資攻略法を徹底解説

AI技術の急速な発達により、投資分野においてもChatGPTをはじめとする様々なAIツールの活用が注目されています。

しかし、AIを用いた投資は本当に有効なのでしょうか?

今回は、AI投資の現実と可能性について、金融とAI技術の両分野に精通した専門家にお話を伺いました。

AIの限界を理解した上で、どのような活用法が実際に効果的なのか、詳しく解説していただきます。

鈴木 智也
茨城大学 学術研究院 応用理工学 教授

【プロフィール】
2005.3 東京理科大学大学院 理学研究科 物理学専攻 博士課程 修了
2005.4-2006.3 東京電機大学 工学部 電子工学科 助手
2006.4-2009.3 同志社大学 理工学部 情報システムデザイン学科 専任講師
2009.4-2016.3 茨城大学 工学部 知能システム工学科 准教授
2016.4-2017.3 茨城大学 工学部 知能システム工学科 教授
2017.4-現在 茨城大学大学院 理工学研究科 機械システム工学領域 教授
2024.4-現在 茨城大学地域未来共創学環(学部等連携課程)教授

【社会活動】
2014.6-現在 日本テクニカルアナリスト協会 評議員
2017.10-現在 大和アセットマネジメント株式会社 特任主席研究員
2019.10-現在 茨城県 いばらきイノベーションアドバイザー


AIツールを用いたFXや仮想通貨投資について

編集長

本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。
まず最初の質問ですが、現在、AIや機械学習などが著しく発達しておりますが、これらを用いてFXや仮想通貨投資をすることは有効であると考えられるでしょうか?
例えばチャットGPTやその他AIツールなどのツールを使って株式市場、世界の経済状況などの情報を得て、チャートの動きを予測して投資するなど具体的な手法があればご教示いただきたいです。

鈴木 智也氏

チャットGPTの普及により多くの方が体感していると思いますが、AIは0から新しい知を産み出すことはできません。既知情報を混ぜ合わせて辻褄合わせするのが得意ですが、その成功パターン(メカニズム)が将来も変わらないという大前提が必要です。よって、政治や経済などの外部環境が刻々と変わる金融市場においては、AIや機械学習の効果はかなり限定的です。

編集長

確かに、金融市場は日々大きく変わるのでかなり限定的になりそうですね。

鈴木 智也氏

しかし、逆に考えれば、動的に変わらない「不変の法則」に着眼すれば話は異なります。例えば予測の観点では、時間スケールを秒などに短縮するほど予測可能性は高まります。実際にFXのリアルタイム板情報を機械学習することで、数秒後の為替変動の予測精度を改善できます。しかし変動幅がスプレッド(売値と買値の差)を超えにくいため、一般顧客が利益を得るのは限定的です。
他の「不変の法則」として、ゴトウビアノマリーのような金融市場の癖に着眼する方法もあります。癖といっても合理的な理由が背景にあるため、簡単には消滅しないと考えられます。こちらは一般顧客でも利益を得ることは比較的容易です。詳しくは以下の参照サイトも参考にしてみてください。

参照サイト

・ゴトー日の仲値トレードはどうすべき?統計データからわかるアノマリー検証
 https://www.fx-cube.jp/content/i020
・外国為替vol.3「今こそ仲値を科学する」
 https://forex-online.jp/fx-interview/vol3-fx-fix/

AIや機械学習を用いた投資を行うことのメリットについて

編集長

AIや機械学習を用いた投資を行うことのメリットをお聞かせいただきたいです。また、メリットを生かした具体的な活用方法も併せてご教示いただきたいです。

鈴木 智也氏

AIや機械学習を用いるメリットは、主に「自動性・安定性・高速性・大量性・客観性」の5点です。
コンピュータによる売買アルゴリズムの歴史を振り返ると、次の表にまとめることができます。

AIや機械学習を用いるメリットは、主に「自動性・安定性・高速性・大量性・客観性」の5点

AIや機械学習を用いた投資を行うことのデメリットについて

編集長

AIや機械学習を用いた投資を行うことのデメリットをお聞かせいただきたいです。また、デメリットの観点から投資をする上で留意すべきことがあれば併せてご教示いただきたいです。

鈴木 智也氏

先に述べたメリットは、AIの可能性であると同時に「限界」でもあります。これ以上のメリットを望むと、根拠に乏しいAIの活用法になります。特に「知能性」について、過度な期待は禁物です。囲碁や将棋の世界では、もはやAIが人間を凌駕しますが、これは先述のように成功パターンが不変だからです。不変な世界ならば、成功パターンの検索問題になりますので、高速性・大量性を有する機械(AI)が有利なのは必然です。
このような成功事例はショッキングかつ大変分かりやすいため、世間一般に「AIは人間より賢い」という漠然としたイメージを与えました。しかし成功パターンが変化する金融市場においては、一筋縄では通用しませんので、軽い気持ちでAIを活用すると火傷します。この「軽い気持ちでAIを使えてしまう手軽さ」こそが、投資におけるAIの最大のデメリットです。

AIツールを用いて投資で利益を上げるため必要な知識とは

編集長

AIツールを用いて投資で利益を上げるため必要な知識や磨いていくべきスキル等がございましたらご教示いただきたいです。

鈴木 智也氏

投資におけるAI活用について、世間一般では「予測」をイメージしがちですが、プロの資産運用業界では「テキスト処理」が主な活用目的です。ご存知の通り、投資対象である上場企業は膨大にあり、企業毎に決算情報やアナリストレポートが存在します。人間が全てに目を通して投資判断するのは非現実的であるため、高速性・大量性を有する機械(AI)を活用します。このように実務においては、AIを活用する対象と目的が極めて合理的であり、AIの活用に疑問の余地はありません。

編集長

なるほど、そもそものAIの活用の対象を明確にする必要があるのですね。

鈴木 智也氏

「なぜAIを使うのか?」この問いに明確に答えられないならば、投資にAIを使うのはやめて、インデックス投資をした方が遥かに賢明です。AIの活用において必要な知識やスキルを問われるならば、「AIのメリットを正しく認識し、根拠のない活用をしない強い意思を持つこと」に他なりません。

今後、AI×投資で期待する事

編集長

今後、鈴木教授がAI×投資で期待する事、実現可能になり得ると考えられる投資手法や技術があれば教えていただきたいです。

鈴木 智也氏

1つ目は最初の質問で述べたように、金融市場に残る「不変の法則」に着眼することは有効です。その分かりやすい事例が「ゴトウビアノマリー」です。日本ならではの前例踏襲主義的な商習慣が発端なので、私は皮肉を込めて「FXファン感謝祭」と呼んでいます。特にドル円市場では、毎月5と10が付く日に「FXファン感謝祭」が開催されており、主に国内輸入企業から利益が漏れてきます。単純なルールで売買するAIアルゴを仕込むだけで、漏れてくる利益を拾えます。この間抜けな収益機会は、商習慣を改善しない限り続きます。これは日経ヴェリタスでも解説しています。

編集長

日経新聞にも取り上げられる手法だったんですね。

鈴木 智也氏

もう一つは、企業のペイアウト政策(増配・自社株買い)を予測する方法です。株価の予測は困難ですが、株価に影響を及ぼす「要因の予測」は難易度が低い場合があります。特にペイアウト政策を実施する企業には共通の背景があるため、AIや機械学習によって政策の実施を予測できます。さらにペイアウト政策後は株価の上昇を期待できるため、投資に役立てることができます。詳しくは以下の参照サイトも参考にしてみてください。

参照サイト

・外国為替vol.15「個人投資家もAIで利益が出せる時代が到来!機械学習を用いた株価予想方法について」
https://forex-online.jp/fx-magazine/fx-15/
・GPIF Finance Awards for Students 優秀研究賞「財務状況の機械学習による増配・自社株買い銘柄の予測可能性およびポートフォリオ運用の高度化」
https://www.gpif.go.jp/investment/research/awards/gpif_finance_awards_for_student_2024-2025.html

まとめ

本インタビューでは、AI技術の専門家にAIを用いた投資術について詳しくお話しいただきました。

重要なポイントは、AIは万能ではなく、その限界を正しく理解した上で活用することです。特に金融市場のような変動の激しい環境では、「不変の法則」に着眼したアプローチが効果的であることがわかりました。

また、プロの運用業界では予測よりもテキスト処理での活用が主流であり、個人投資家もAIの本質的な能力を理解して活用することが重要です。

ゴトウビアノマリーや企業のペイアウト政策予測など、構造的な特徴を活かした投資手法は、今後も発展の可能性があると期待されます。

今回のインタビューが、読者の皆様の投資手法の参考になれば幸いです。